2009年11月30日

wearing clothes like Hulot!!!



第何回目なの?か、”映画を映画館で観よう会”を開催。
あいにくの雨降りの日曜。at BFI。
今回は、Jacques Tatiの'Playtime'を、フレンチ同好会仲間のさやかちゃんと2人で。

映画の前に早めに逢って軽くランチしたあと、シネマに向かう。入口の前には、入場を待つ人々。前の回は子供映画だったのか親子連ればかりがうようよと出てきたのに、この映画にはなぜかご年配の方が多い。それもおじいちゃん。一人だったり、夫婦だったり。
”昔を思い出して、'Playtime'を再び観に!”といった感じなのだろうね、と二人で妄想する。
入場後、あれれ?入口に大勢いたはずのご年配の方々が周りにいない。なぜ? きっと、もう、張り切って前売りで良い席を買ったから、私たちの座っている微妙に悪くはないけれど完璧ではない席の周りにはいないのだろう。残念。
と、思ったら、前の1列は、10人前後の集団、若干20歳前後。ギャングのようで、楽しそうである。(これ、やりたい。と、いつも思うのだが休みが合わない・趣味が合わない・などなどの理由でまだ実現されず…。いつか、必ずやるけどね。)私たちの目の前に座っていた子のツイードジャケットに目が釘ずけになっていたら、私の隣の同好会仲間も、同じだったようで、映画が始まるまでしばしその子を観察。

映画もしっかり堪能。ヴィデオ(DVD)で観た時に感じなかったことや、一人で観たときに笑わなかった場面が笑えたり、とか、空間の広さとか、色合いの素敵さもさらに感じつつ。
終わった後に、あーだこーだ、と、好きだった場面とか事とかを話すのもやはり楽しい。

この映画に出てくる紳士達の格好!絶妙な丈のズボンに靴、そしてその間を埋める靴下。型の完璧なコート、そしてハット。いい時代です。


で、私たちの前に座っていた子。茶系のツイードジャケットに、同系色のニットスカーフ。で、その上、ちゃんと見たら、その上には、茶系のツイードコートを着て、杖を手に(雨なのに、傘じゃないってなに?)帰って行った。まさに、こんな感じのコート。

次に見かけたら、無意識に声をかけてしまうでしょう。写真、撮っておけばよかった…。


映画館で映画を観る、特に昔のものが、その何日間かしか再上映されない時に、ちょっと自分なりにその映画に向ける愛情を表現するのって、素敵。
そんな私も、誰にも判らないであろうが、パリのスーヴェニアスカーフ、巻いてたりしてね。

2009年11月25日

Winter Secret ( make a wish to santa claus! )

もう冬ですね。

ということで周りには知られたくない、今年とっておきの冬シューズをサンタにお願い!


Belgian Shoes

お値段300ドル也。
スウェードかクラッシュベルベットが特に最高。

もちろんメンズが履いた方がカッコイイに決まってるけど、これは履く人を非常に選ぶシューズなので
よくわかってないコーディネートで履いたら赤っ恥をかきますよ。恐ろしいですよ。

私は街を歩くとき下ばっか向いて歩いてるんだけど、この靴を上手に履いた男の人が居たら足下だけで惚れる自信あります。
あと男の人のローファーxアーガイルにもめっぽう弱いです。ここメモっとくように。

それにしても去年はRussell&Bromleyタッセルローファー、Sperryのボート、Barbourのコートなんかが被害を被ったけど
ホントみんななんでこんなにタイムレスでクラシックなモノを流行だけで買ったり捨てたりするんだろーかマジで。
撃ち殺してやりたい衝動に何度駆られただろう。ねぇタカちゃん?

2009年11月23日

頭の中で回っていた言葉



先日、古くからの友に約5年ぶりに逢った。
初めて自分だけのカメラを手にした頃に出会った友。いっぱいいろんな話をし、いろんなところに遊びに行き、見、いろんなものを一緒に食べた。私が日本に居た時に、いっぱいカメラを向けた相手の一人でもある。

「変わってないね。」と、お互いになんのブランクもなく、相変わらずのテンポで、話をした。”変わっていない”とは、もしかしたら、人によっては良くない印象を受けるのかもしれないが、私とその子の間では、”出会ったころから人として惹かれたあなたの部分は変わっていない。”という、とてもpositiveな言葉である。



週に1回は買うつもりがなくても、ついつい顔を出してしまう私のクローゼットのようなお店に足を運ぶ。
なぜ?って、ただ単純にそこに置いてあるものが好きだから、ということだけではなく、そこにいるおばあちゃんとその息子に逢うのが好きだから。
他愛のない話しかしない。とも、言えるが、他愛のない話をする、それが好きなので。彼ら、特におばあちゃんは、私の好きなものを知っているから、例え購入しないにしても、「これ、見て見て!すごく素敵な30年代のドレスじゃない?」とか、「これ、素晴らしいスカーフでしょ?」とか見せてくれる。そこから広がる会話は、私をほっこりさせてくれるのだ。

今回もまた、お酒を2杯飲むくらいの値段の買い物をしてしまった私。帰り道でニヤけてしまっていたのは言うまでもない。



いつも行く写真屋に、ここ最近出向いていなかったのだけれど、久しぶりにフィルムがたまったので出向いた。
「元気にしてた?最近忙しい?」と、お互いに最近の生活をちょっぴり話す。話すといっても、私の生活は彼が現像しているそのフィルムの中におさめられているので、バレバレである。
「このおじいちゃん達のバンド、いつもキミの写真に写ってるよね。いつも観に行ってるの?」といった具合。
おじさん:「明日仕事?」
私:   「うん、明日も仕事。お金稼がないとね。」
おじさん:「そうだね、仕事して稼がないとね。で、いっぱい写真撮りなよーー。」
と、店を出た。

「いっぱい写真撮りなよ。」が、私の心には、”いっぱい写真撮ってね。それで、また出しにきてね。僕も仕事になるし。何より、キミがまた店に来てくれるから。”と聞こえたのは幻聴ではないはず。



毎週金曜に行くpubがある。そこで演奏しているおじいちゃん達。
なぜかは自分でもわからないが、かれらと、沢山はうまく会話ができない。できない、のか、していない、のか・・・・。
この間、その一人が私にこう言った。
「いつも、写真撮ってるよね。何撮ってるの?いつも、一緒じゃない、僕らは。」
私は、「いつも一緒じゃないよ。毎回違う。だから撮ってるんだもん。」って。
「見てみたいなぁ、その写真。」と言われた。
もちろん、2,3mのところからカメラを毎回のように向けられているのだから、撮られていることは知っていたのだ。

”まずは僕からちょっと遠くにすわって。僕はキミを横目で見るけど、キミは何も話しちゃだめだよ。だって、言葉は誤解のもとだから。でも、日を重ねる毎に、キミはちょっとずつ僕の近くに座っていいからね。”
まるで、星の王子様で、キツネが言ったことを自然に行動していた私。

「また来週ね。それまで元気で!」
その言葉を聞く度に、1週間頑張ろう。って思えるのです。



毎日の生活の中で起こる小さな出来事や交わされる些細な一言に幸せを感じれる今日この頃。

2009年11月6日

The Savage Club

ちょっと今日はありえないくらい面白い一日だったので忘れる前に日記にしておきます。


まず朝ショップからの電話で目が覚める。なんか勤務店を変えないか、という打診だったのだけど一番好きなエリアなので時間などの条件さえ合えば行ってもいいかな、とかコーヒーを煎れながらボーっと考える。通勤ちょっと面倒になるけどね。

そして買ったばかりのDVD、Stormy Weatherを観ながら何本がメールの返信をして昼過ぎにJazz Bandを見にグリニッジまで行く。
久々に顔を出したのでみんな(何度も言うけど全員老人)が元気にしてたか?と色々心配してくれたり、来るって言うから席とっといたよ、って一番前の常連席をリザーブしておいてくれたりして、なんかこんなに優しい人たちに囲まれて自分は本当に幸せ者だとつくづくおもう。

ちなみにクラリネットのNickは「君も風邪?多分私が移したか君のが私に移ったかどっちかだね、今日はあまり調子がよくないみたいなんだ」と言っていたが、その割にはWolverine Bluesを完璧に吹ききっていて、それがあまりにもカッコいいアレンジだったからまたしても惚れ直した。本当にこの人には長生きして欲しい。

そして終了間際に「会社に行く途中に寄った」といいながら現れたバンジョー奏者Nick Singerと目的地が同じ方向なので一緒に帰る事にし、成り行きでそのままAngelにある彼の会社へ社会科見学に行く。
というのもこの人、セミプロのミュージシャンでありながら科学者の顔も持つ興味深い人で、Angelにある小さな会社で代表を務めているのだけどその会社ってのがロボット制作をしている会社なのだ。
Nasaとか国軍事関係をクライアントに持ついわば最先端のロボット技術会社なのだが、そのオフィスは至って普通。というか普通以下。道ばたにある曇りガラスのよく判んないテナント店舗、もしくは不法ポルノ店?といった佇まいである。会社名も外に出ていない。
しかしそれは勿論外見でどんな会社か判ってしまうと強盗に入られる危険性が高まるからという理由で不法ポルノ店的店構えなのであって、一旦中に入ると14人のトップブレーン達がそれぞれのデスクでICチップを手作業で作ったり、ロボットに向けて発信する電子プログラムの構築などをコツコツと行っていた。
ちなみに作業場に入る前、機密関連の契約書にサインさせられたのだが、心配しなくても何やってるかまるで理解不能なんで大丈夫っす。

十分にロボット制作現場の見学及び博士レベルのオタク達の熱弁を聞いたあと、Nickとまた後で飲みに行く約束をして一旦ビデオを返して、おばちゃんの店でスカーフと帽子を買い、それからタップのクラスに出席するためCovent Gardenへ。
今日のTapはいつもと同じ先生が本当に初心者用にレベル設定してくれたクラス。基礎中の基礎「シャッフル」の練習から始めたのにも関わらず、一時間後には生徒6人全員がタイムステップを踏めるまでに成長しているというミラクル発生。本当に良い先生なんだと思う。一人一人にちゃんと時間をかけて出来るようになるまでアドバイスをくれ、音楽と合わせたときのカウントの仕方などテクニック以外のことまでわかりやすく説明してくれた。Derek Hartleyという先生です。大好き。

クラスが終わってからFoylesで本を一冊買い、Nickと飲みにいくためバスでChalk Farmまで向かう。が、Foyles前のバスストップで小説家だと名乗る中年の男の人に「あなた珍しいほど素晴らしい格好してますね。今とある調査の仕事で普段あまり人がしないことにチャレンジしてくれるモデルを探してるんですけど、是非やってくれませんか?報酬は沢山出ます」と話しかけられる。
「色んな事って何しなきゃいけないの?」と聞き返すと「例えば街では皆、靴を履いて歩いてますよね。そこを靴無しで歩いてみて周りの反応を見る、とかそういったチャレンジです」という。なんじゃそりゃ。
「えっと、街を靴なしで歩くとかそういう自分の中で大切にしているモラルに反する事は凄くストレスになるのでできません」と断ると「少し頭の回転の良すぎる方を相手にしてしまった。残念ですが諦めます」といってその男は去って行った。

そんなよくわからん足止めをくらいつつ、やっとChalk Farmにある目的地のパブに着くとなんといつもやってるレギュラーのニューオリンズ・ジャズバンドじゃなくすっげーダッサいプログレジャズみたいのがやってる!ありえん!
ということで2人して無言で踵を返し、「どこ行こうか?100Clubに行く?あーでも今日は良いバンドじゃないね」なんて言いながら夜道を腕組みしながら歩いていると、急にNickが「あ!じゃあSavage Clubに行ってみない?会員なんだ」といって私の服装を素早く確認、「大丈夫だ」と言い「僕のタイはエントランスが貸してくれる」と言ってEmbankment行きのTubeに乗せられる。
「ねえSavage Clubってなに?会員制のジェントルマンズクラブみたいな所?」と聞くと
「そうさ、ロンドンのボヘミアン・ジェントルマンズクラブの先駆けみたいな場所でね、いつ行っても興味深い人たちがいるから行ってつまらない思いをした試しがないんだ」という。

とにかくよく掴めないままに到着すると、なんという門構え!



というのもここはかの有名なナショナル・リベラル・クラブ。どうやらSavageはこのリベラルクラブという大きな会員制クラブの中に属するクラブらしい。
中に入るとシャンデリアのホールから上に延々とつづく螺旋の階段。
ポーターの男の人が「お久しぶりですね、タイご用意しときましたよ(笑)」となんとも気の利いた(もちろん用意してたわけではない)挨拶をして、さりげなく私のスカーフにマッチした色調のタイをNickに手渡している。
それからホールを通り、大広間を横切り、奥にある小さな暗証番号キー付きのドアを開けて中に入ると、まるで誰かの家の書庫にいるような小さくて落ち着いた雰囲気のバーで2人程男の人が飲んでいた。
両人ともNickから紹介され、片方は裁判官、もう一人は文学をしている人ということが判明。壁中が本棚みたいになってるのだが、その本は全て歴代の会員の著作物であるという。
それからお金を払えば誰でもいいというわけではなく、Savageの会員になるためにはアート、ドラマ、ミュージック、文学、法律、科学の6つの分野のうちどれかに属し、かつ会員2名からの推薦状がないといけないらしい。
とにかく空いた口が塞がらないわけだが、それに追い打ちをかけるかのようにゴージャスな階段をあがった2階にある書庫に案内してくれるNick。

うおーー!テンション上がるよこれは。メチャクチャ高い天井の大きな図書室に古い書物がぎっしり詰まっていて、座り心地のよさそうなチェスターチェアや4人がけのカードテーブルなんかもあったりしてまるで夢のようである。
天井には奇麗な模様が埋め込まれてあり、窓の外にはテラスがあってその目の前にはテムズ川、向こう岸にサウスバンク/ロンドンアイが見える。

ちょうどTop Hatの最初のシーンのような感じの部屋!時間が時間で誰もいなかったけどね。


それからまたバーに戻ってさっきの人たちに色々と面白い話をしてもらっていると、胸に黄色いバラをつけたおじいさんの会員が入って来て、「あれぇ?レディがいるぞ。今日入れてもいいってルールならわしも3人程入れたいんだがいいかい?」という。なにそれ?とNickに聞くとどうやら火曜と水曜の夜以外女性はクラブ内立ち入り禁止なんだとか。ルール違反なのかよ私!まあNickだから、ということで許されるらしくそのまま11時過ぎまでひたすら飲んで会話して、「こんな面白い所に連れて来てくれて本当にありがとう!」とNickにお礼を言って帰って来た。あー久しぶりに気持ちよく酔っぱらって楽しかったー。

2009年11月4日

from October to November

10月があっという間に過ぎて、もう11月、イメージではもう冬。お気に入りのチェックのレインコートはもう寒くて着れないのかと思うと、さみしいのだけれど、Pコートの出番がやってきたと思うと、ちょっぴり嬉しかったりもする。厚手のニットのマフラーも、タートルネックセーターももうすぐ出番です!

ここ2週間は友達の誕生日もあり(ナツミちゃん、おめでとう。サヤカちゃんも、おめでとう。素敵な歳でありますように。)、
気を抜いた瞬間に風邪を引き、
まだまだAbsolute BigginerだけれどTap DanceとBalletのクラスに足を運びだし、
今年の3月から始めていたけれど滞っていたcross stichも再開しました。
そうそう、第二回映画鑑賞会at Cinemaも友達と3人で ’絞首刑’ by 大島渚 を観に行きました。
相変わらず、
DVDを借りて映画を観たり、
なかなか進まなかったりもするのだけれど、読書をしたり、
顔なじみのお店に行って、店のおばあちゃんやおじさんとちょこっと小話をしたり、
Jazzを聴きに行って、おじいちゃん達の昔話に感動したり、かっこよさに惚れたり、
ナツミちゃんと時々起る興奮冷めやらぬ朝まで続く話をしたり、
母のやる気に満ちた趣味のお話に元気をもらったり、
昔からの友達から時々来るメールにニンマリしたり、
数少なけれど大切に思える友達と逢って話をして刺激をもらったり・・・・。
Things happen everyday aren't easy, but Life is beautiful. です。

読んだ本
・車輪の下 ヘルマン・ヘッセ
・羅生門 芥川龍之介

読んでいる本
・嘔吐 サルトル
・To kill a mocking Bird (←まだ、終わってない・・・・。)
・日々の泡 ボリス・ヴィアン


この1カ月で観た映画
・Bringing up Baby (赤ちゃん教育)
・Roman Holiday (ローマの休日)
・Breakfast at Tiffany (ティファニーで朝食を)
・Charade (シャレード)
・Paris When It Sizzles (パリで一緒に)
・Wait until Dark (暗くなるまで待って)
・Rear Window (裏窓)
・The Barkleys of Broadway
・Sunflower (ひまわり)
・To have and Have not (脱出)
・Daddy Long Legs (あしながおじさん)
・The Spirit of Beehive (ミツバチのささやき)
・Cria Cuervos (カラスの飼育)
・The Great Gatsby (華麗なるギャッツビー)
・La Dolce Vita (甘い生活)
・Royal Wedding (恋愛準決勝戦)
・Mogambo (モガンボ)
・How Green was My Valley (わが谷は緑なき)
・Play Time (プレイタイム)
・Harvey
・It's a wonderful Life (素晴らしき哉、人生!)

映画館で観たもの
・Notorious (汚名)
・Bonnie and Clyde (俺たちに明日はない)
・Death by Hanging (絞首刑)


自分が立ち止まってしまう棘みたいなものって、昔から変わっていないみたいだけれど、少しずつでいいから成長していますように。と、暮らしています。

人生においての哲学

お久しぶりです。仕事も趣味も毎日忙しくて参ります。タップもバレエも楽しく続けてるし、映画も沢山見ているよ。

ということでここ最近見た映画…

It's a wonderful life『素晴らしき哉、人生!』
Some like it hot『お熱いのがお好き』
Arsenic and old lace『毒薬と老婆』
Butch cassidy and the Sundance kid『明日に向かって撃て!』
Roman Holiday『ローマの休日』
The Great Dictator『独裁者』
Cover Girl『カヴァー・ガール』
The Public Enemy『民衆の敵』
Don't look now『赤い影』
Harvey『ハーヴェイ』
Spellbound『白い恐怖』
The lives of others『善き人のためのソナタ』

何週間か前にTubeに乗っていたら、隣に座っていた中年のジェントルマンが私のカバンから落っこちそうになってた2本のDVDを見て、「Elia Kazanの映画なんて見てるの?それ(Tree grows in brooklyn)私のフェイバリットフィルムの一本だよ」と話しかけてきたのね。
どうやらこのStephenという人、昔BBCでフィルムの編集の仕事をしてたみたいで少し映画の話をして、第三の男を観たらと勧められてメアドを教えてもらって別れたんだけど、その後映画の感想をメールしたら「じゃあ次はDon't Look Nowを観てからまた感想を送って」と言われた。
しばらくしてDon't Look Nowを観た後(本当に素晴らしく奇麗なカメラワークと色彩の映画でした)に感想をまたメールした時に、丁度お互いWest Endに午後いる、ってことでお茶の約束をしたわけですよ。
待ち合わせをしてWest Endを一緒にブラブラ歩きながらよく行くカフェに連れてってもらって色んな話をしていると、ほぼ初対面なのになんだか古い付き合いの友達のような感覚に陥って必要以上に自分の事を沢山喋ってしまい帰ってからしばし反省。しかし人の中身をここまで明快に理解してくれるこういう大人の人に会うと、歳を取るってほんとうに素敵だなって思うのよ。
そして彼が翌日私に、とお勧めしてくれた近代ドイツ映画、The lives of othersはいとも容易く私のフェイバリットフィルムになってしまうのでした。

その映画の大きなテーマでもあり、英題の参考にもなったであろうペリクレスの
“What you leave behind is not what is engraved in stone monuments, but what is woven into the lives of others.”
汝がこの世に残すもの。それは石の碑に刻んだものではない。他人の人生に織り込んだものだー
という名言は、私が大切な人たちの前でうっかりこぼす人生の指標というか哲学のようなものそのもの。私はいつも「人生の目標にすべきことは、どれだけ多くの栄光を残すかではなく、どれだけ多くの人の心に影響をあたえられるかだ」というような言い方をするんだけどさ。凄くシンプルな哲学。これをポロっと私が口にしたのをきっと覚えててくれた上でのチョイスなんだろうな、と思うとなんだかとても大切にすべき友人を手に入れたような誇らしい気になるのでした。

そして80歳のクラリネット奏者Nick。大好きで毎週会いに行くんだけど、口数は少ないのに急に良い事を言ったりするから面白い。
こないだ普通のベルトとサスペンダーベルトを両方しているのを私が「どうして?」と指摘すると
「それはね、実に面白くない真実なんだけどこのベルトが無いとサスペンダーの金具の挟む力が緩くてズボンが落ちちゃうんだ」という。
「あー、そっか!なんか理由があると思ったんだよね」と感心してると
「僕は今まであまり本当の事ばかり言っても意味がないからって黙っている事が多かったけど、言うべき人に伝えるとそれは興味深い会話として成立するものなんだね」といってから「…でもあまり正直に生きてると周りを傷つけてしまうよね」と自分に言い聞かせていた。
こういう小さなことを私はきっといつまでも忘れないし、それはつまりNickのぼんやりと考えていることが私の人生に織り込まれた瞬間だといえる。

毎週金曜に見に行く88歳のトランペット奏者Al Wynetteはいつも洒落ててカッコイイ。着ている服から帽子、トランペットの持ち方に話し方、とびきり自然にウインクしたりするところも凄く素敵なんだけど、こないだタップを始めた話をしてるときに私が
「ねえ、あと3年くらい本気で頑張って上手になったら一緒に一曲演奏してくれる?」って訊いたら
「きっとその頃俺は地面の中にいるかもしれないなあ」というので
「じゃあ毎週金曜はAlのお墓の上でタップしたげる」というと
「そりゃ嫌だな、頑張ってお前が上手になるまではトランペットやめないでいなきゃな」といって笑ってくれた。
この一瞬もまた、私は一生忘れないでいたいと思う。

それ以外にも、タップの先生が教えてくれたことや、映画のセリフたち、音楽のメロディ、通りすがりの人がしてくれた会釈、一日で終わるような小さな恋、お客さんが残して行った気の利いたジョーク、秋の空や落ち葉など本当に毎日色んなものから人生を学んではいちいち感動していた10月。