2009年11月4日

人生においての哲学

お久しぶりです。仕事も趣味も毎日忙しくて参ります。タップもバレエも楽しく続けてるし、映画も沢山見ているよ。

ということでここ最近見た映画…

It's a wonderful life『素晴らしき哉、人生!』
Some like it hot『お熱いのがお好き』
Arsenic and old lace『毒薬と老婆』
Butch cassidy and the Sundance kid『明日に向かって撃て!』
Roman Holiday『ローマの休日』
The Great Dictator『独裁者』
Cover Girl『カヴァー・ガール』
The Public Enemy『民衆の敵』
Don't look now『赤い影』
Harvey『ハーヴェイ』
Spellbound『白い恐怖』
The lives of others『善き人のためのソナタ』

何週間か前にTubeに乗っていたら、隣に座っていた中年のジェントルマンが私のカバンから落っこちそうになってた2本のDVDを見て、「Elia Kazanの映画なんて見てるの?それ(Tree grows in brooklyn)私のフェイバリットフィルムの一本だよ」と話しかけてきたのね。
どうやらこのStephenという人、昔BBCでフィルムの編集の仕事をしてたみたいで少し映画の話をして、第三の男を観たらと勧められてメアドを教えてもらって別れたんだけど、その後映画の感想をメールしたら「じゃあ次はDon't Look Nowを観てからまた感想を送って」と言われた。
しばらくしてDon't Look Nowを観た後(本当に素晴らしく奇麗なカメラワークと色彩の映画でした)に感想をまたメールした時に、丁度お互いWest Endに午後いる、ってことでお茶の約束をしたわけですよ。
待ち合わせをしてWest Endを一緒にブラブラ歩きながらよく行くカフェに連れてってもらって色んな話をしていると、ほぼ初対面なのになんだか古い付き合いの友達のような感覚に陥って必要以上に自分の事を沢山喋ってしまい帰ってからしばし反省。しかし人の中身をここまで明快に理解してくれるこういう大人の人に会うと、歳を取るってほんとうに素敵だなって思うのよ。
そして彼が翌日私に、とお勧めしてくれた近代ドイツ映画、The lives of othersはいとも容易く私のフェイバリットフィルムになってしまうのでした。

その映画の大きなテーマでもあり、英題の参考にもなったであろうペリクレスの
“What you leave behind is not what is engraved in stone monuments, but what is woven into the lives of others.”
汝がこの世に残すもの。それは石の碑に刻んだものではない。他人の人生に織り込んだものだー
という名言は、私が大切な人たちの前でうっかりこぼす人生の指標というか哲学のようなものそのもの。私はいつも「人生の目標にすべきことは、どれだけ多くの栄光を残すかではなく、どれだけ多くの人の心に影響をあたえられるかだ」というような言い方をするんだけどさ。凄くシンプルな哲学。これをポロっと私が口にしたのをきっと覚えててくれた上でのチョイスなんだろうな、と思うとなんだかとても大切にすべき友人を手に入れたような誇らしい気になるのでした。

そして80歳のクラリネット奏者Nick。大好きで毎週会いに行くんだけど、口数は少ないのに急に良い事を言ったりするから面白い。
こないだ普通のベルトとサスペンダーベルトを両方しているのを私が「どうして?」と指摘すると
「それはね、実に面白くない真実なんだけどこのベルトが無いとサスペンダーの金具の挟む力が緩くてズボンが落ちちゃうんだ」という。
「あー、そっか!なんか理由があると思ったんだよね」と感心してると
「僕は今まであまり本当の事ばかり言っても意味がないからって黙っている事が多かったけど、言うべき人に伝えるとそれは興味深い会話として成立するものなんだね」といってから「…でもあまり正直に生きてると周りを傷つけてしまうよね」と自分に言い聞かせていた。
こういう小さなことを私はきっといつまでも忘れないし、それはつまりNickのぼんやりと考えていることが私の人生に織り込まれた瞬間だといえる。

毎週金曜に見に行く88歳のトランペット奏者Al Wynetteはいつも洒落ててカッコイイ。着ている服から帽子、トランペットの持ち方に話し方、とびきり自然にウインクしたりするところも凄く素敵なんだけど、こないだタップを始めた話をしてるときに私が
「ねえ、あと3年くらい本気で頑張って上手になったら一緒に一曲演奏してくれる?」って訊いたら
「きっとその頃俺は地面の中にいるかもしれないなあ」というので
「じゃあ毎週金曜はAlのお墓の上でタップしたげる」というと
「そりゃ嫌だな、頑張ってお前が上手になるまではトランペットやめないでいなきゃな」といって笑ってくれた。
この一瞬もまた、私は一生忘れないでいたいと思う。

それ以外にも、タップの先生が教えてくれたことや、映画のセリフたち、音楽のメロディ、通りすがりの人がしてくれた会釈、一日で終わるような小さな恋、お客さんが残して行った気の利いたジョーク、秋の空や落ち葉など本当に毎日色んなものから人生を学んではいちいち感動していた10月。

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